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羊をめぐる冒険

Category : 本・雑誌 小説 .ま行 村上 春樹
羊をめぐる冒険 (上) (講談社文庫)

「羊のことよ」
「たくさんの羊と一頭の羊」
「羊?」
「うん」
「そして冒険が始まるの」

そうして、僕は美しい耳の彼女と羊を探すことになった。
やれやれ。
僕はきっと自分が何を探すことになるのかまったくわかっていない。

でも、たぶんそれは誰だって一緒だ。
それがわかっている人がどれだけいるだろうか。

"キー・ポイントは弱さなんだ"

「風の歌を聴け」から続くこの物語は"僕"と"鼠"の物語だ。
自分はどうしようもなく弱いと言う鼠。
それに対して、人はみんな弱く強い振りをしている人間がいるだけだという僕。
私はたまらなく鼠が好きだ。
行き場のない一般論を振りかざす僕よりもずっと。

二人が再会した時、羊をめぐる冒険は終わる。

世の中に失われないものがあるのか。
本当は強いふりをしている人間がいるだけなのか。

冒険の先でこの答えがわかるかもしれない。
しかし、覚悟が必要だ。
それは、すべてを失い、自分の弱さを知るということなのだから。

「もう終わったんだね?」
「ある意味ではね」
「歌は終わった。しかしメロディーはまだ鳴り響いている」
「あんたはいつも上手いことを言うね」
「気障なんだ」

+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

初期3部作の完結ともなる長編作品です。
この作品を読む前に前の2作は絶対に読んでおいたほうがいいです。
そして、前の2作を読んだなら、この作品も絶対に読んでおくべきです。
前の2作までで散りばめられていたものが、この作品で繋がります。
ストーリー性を帯びていて不思議な世界に一気に引き込まれます。
何もかもが不思議なんですが、こうじゃないと成り立たない物語なんですよね。
終盤の雪崩れ込むような展開は圧巻。
どうしようもない切なさが読んだ後もずっと残る作品です。

私的評価 ★★★★★



時は死に絶えていた。死に絶えた時の上に音もなく雪が降り積もっていた。

「俺は俺の弱さが好きなんだよ。苦しさや辛さも好きだ。夏の光や風の匂いや蝉の声や、そんなものが好きなんだ。どうしようもなく好きなんだ。君と飲むビールや・・・」

鼠はそこで言葉を呑み込んだ。

「わからないよ」

僕は言葉を探した。しかし言葉はみつからなかった。僕は毛布にくるまったまま暗闇の奥をみつめた。



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ジャンル : 本・雑誌

1973年のピンボール

Category : 本・雑誌 小説 .ま行 村上 春樹
1973年のピンボール (講談社文庫)

1973年9月、この小説はそこから始まる。

僕はピンボールの呪術の世界に入り込んでいた。
3フリッパーの「スペースシップ」。彼女は素晴らしかった。

そして、年が明けた2月。彼女は僕のもとを去っていった。
しかるべき時がきただけだ。

ある晴れた日曜の朝。
目を覚ました時、両脇に双子の女の子がいた。
これもまた、しかるべき時がきただけの話だろう。

配電盤が死にかけているのも、あるいはそうなのかもしれない。

直子が僕の前から消えたこと・・・
これも、おそらくはしょうがないことだったんだろう。

何事にも始まりと終わりがある。
大抵のものに入口と出口があるように。
それは必然であり、誰にもそれを変えることはできない。
そうして、あらゆるものは過ぎ去っていく。

テネシー・ウィリアムズがこう書いている。過去と現在についてはこのとおり。
未来については「おそらく」である、と。
しかし僕たちが歩んできた暗闇を振り返る時、
そこにあるのもやはり不確かな「おそらく」でしかないように思える。
僕たちがはっきりと知覚し得るものは現在という瞬間に過ぎぬわけだが、
それとても僕たちの体をただすり抜けていくだけのことだ。

何かが過ぎ去るのはやはり寂しい。どちら側にいたとしても。
だから、振り返るのはよそう。
長々と話すのもやめよう。

その代わり、たった一言この言葉だけ交わして欲しいんだ。
"またどこかで会おう"と。

+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

初期の青春3部作のうちの第2作です。(ダンス・ダンス・ダンスまで括ると4部作)
本作はデビュー作の「風の歌を聴け」やこの後の「羊をめぐる冒険」に比べるとやや影が薄いです。
でも、決して読み飛ばすことはできない作品です。
第3作の「羊をめぐる冒険」はもちろんのこと、後の作品に繋がってくる部分が各所に見られます。
「ノルウェイの森」の直子、そして「ねじまき鳥クロニクル」の井戸のメタファー等々。
今回も前作の「風の歌を聴け」と同様に"僕"と"鼠"と"ジェイ"が出てきます。
ただ今回は"僕"と"鼠"の2人の接点はなく、並行線のまま話は進んでいきます。
前作に比べると、雰囲気はどことなく前向きで爽やかさが残ります。
これもまたボリュームが全然ないので、あっさり読めてお勧めです。

私的評価 ★★★★☆



「それでも人は変わりつづける。変わることにどんな意味があるのか俺にはずっとわからなかった」
 鼠は唇を噛み、テーブルを眺めながら考え込んだ。
「そしてこう思った。どんな進歩もどんな変化も結局は崩壊の過程にすぎないじゃないかってね。
 違うかい?」
「違わないだろう」
「だから俺はそんな風に嬉々として無に向かおうとする連中にひとかけらの愛情も好意も持てなかっ
 た。・・・この街にもね」
 ジェイは黙っていた。鼠も黙った。彼はテーブルの上のマッチを取り、ゆっくりと軸に火を燃え移らせ
 てから煙草に火を点けた。
「問題は」とジェイが言った。
「あんた自身が変わろうとしていることだ。そうだね?」




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風の歌を聴け

Category : 本・雑誌 小説 .ま行 村上 春樹
風の歌を聴け (講談社文庫)

「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」

この冒頭を見た時、おそらくこの小説は恐ろしく不毛なものなのだろうと思った。
そして、実際にそうだった。
ちなみに、これは褒め言葉である。

基本的には、僕と鼠とそして、女の子の話だ。
ストーリーなんて立派なものはない。
本当は最初から何もないのかもしれない。
何かあるとしたら・・・風。
ただ傍にふっとやってきて、そして静かに去っていく。

それを感じることが出来れば良かったのに。
あるいは、その風のために何かが書けたらどれだけ素敵だったろうか。
なぜ、色々と余計なことを考えてしまうんだろう。
いつから、風の歌を聴けなくなったんだろう。

私が最初にこの本を読んだときはまだ大学生にもなっていなかった。
季節は夏。特に何をするでもなくビールを飲む。どこかの女の子と。
これから吹いてくる風なんて少しも気にしてなかった。

それから何度この本を読み返しただろう。気づいたら大学生を通り越して社会人になっていた。
季節は冬。特に何をするでもなくビールを飲む。たぶん一人で。
あの頃吹いていた風はどこにいったんだろう。

2010-1218

最近、映画「ノルウェイの森」が話題になっていて、また最初から読みたくなったので読了。
夏の終わりか一年の終わりに読みたくなる作品ですね。
最初読んだときはとてもクールで格好いいと思いました。
ストーリー性なんてないのだけど、乾いた文章で一つ一つの台詞が洒落てて良かったんです。
でも、読んでいく度に影みたいなものをすごく感じます。
僕と鼠のやり取りが、どうしようもなく悲しくて切なくて。
氏は、今いる世界から連れ出すのが上手い人だなと思います。
あたかも、その世界で自分がそういう体験をしてきたかのような。
そして、それはだいたい何かを失って戻ってくる体験です。
その"喪失感"を味わうことで、本当に自分にとって大切なものが浮き彫りにされてくるというか。
私はよくそういう感覚に陥りますね~。
まだ読んだことのない人は、やはりまずはデビュー作の本作ですかね。
後の作品に繋がってくる作品でもあるので。
量も少なく、1~2時間でさくっと読めてお勧めです。
あと、デレク・ハートフィールドについて調べてみると面白いことがわかります。

私的評価 ★★★★★



「・・・強い人間なんてどこにも居やしない。強い振りのできる人間が居るだけさ。」
「ひとつ質問していいか?」
僕は肯いた。
「あんたは本当にそう信じてる?」
「ああ。」
鼠はしばらく黙りこんで、ビール・グラスをじっと眺めていた。
「嘘だと言ってくれないか?」
鼠は真剣にそう言った。





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スプートニクの恋人

Category : 本・雑誌 小説 .ま行 村上 春樹
スプートニクの恋人 (講談社文庫)

"あちら側の世界"と"こちら側の世界"について考えたことがあるだろうか。

ある日突然"こちら側"にいたぼくが"あちら側"にいる。
ある日突然"こちら側"にいた彼女が"あちら側"にいる。

あちら側は自分でもわからないぐらい遠い世界かもしれない。
或いは、夢の中でしか辿り着けない世界かもしれない。

そして、これは、誰にでも容易に起こりえる。特に恋愛に関しては。
物語の中の"ぼく"と"すみれ"と"ミュウ"がそうだったように。

この物語では一貫して"喪失感"が描かれている。
"こちら側"に残された者。"あちら側"に行ってしまった者。
それぞれの思いがどうしようもなく哀しく、寂しくすれ違って。。。
なぜ、そこまで孤独にならなくてはいけないのか。
なぜ、大切なものをわざわざ失わなければいけないのか。

そもそも、人を好きになるとは?愛とは?
その答えは?
・・・わからない。
だけど、その答えには少なからず"喪失"が含まれているはずだ。
だから、なにか大切なものが欠けたり、失う必要があるんだ。
それは、人が撃たれたら、血が流れるぐらい自然なことで現実の根本にあるもの。

結局のところ、人間の一番奥底にある本質は孤独なのだろうか。
そうだとしたら、ずいぶんと哀しい生き物だ。
これじゃあ、スプートニクと一緒じゃないか。

でも、ぼくらは同じ世界の同じ月を見ている。ぼくらはたしかにひとつの線で現実につながっている。
じゃあ、どうすればいい?
やることは単純だ。
その細い糸を静かにたぐり寄せていけばいいだけ。

2010-1127

この前の「遠い空の向こうに」でスプートニクが出てきて、この作品を思い出しました。
それだけの理由で、かなり久しぶりに読み返してみました。
最初読んだときは、とにかく難しいな~って感じでした。
でも、この人が作る不思議な世界ってなんか魅力的なんですよね。
改めて読んでみるとこれは純粋なラブ・ストーリーであると思いました。
そして、伝えたいことはとてもシンプルなのかなと。
最後の展開はちょっとだけ前向きな方向でしたが、
やはりどこか"喪失感"を感じずにはいられない終わり方でした。

私的評価 ★★★★☆



ぼくは眼を閉じ、耳を澄ませ、地球の引力を唯ひとつの絆として
天空を通過しつづけているスプートニクの末裔たちのことを思った。
彼らは孤独な金属の塊として、さえぎるものもない宇宙の暗黒の中でふとめぐり会い、
すれ違い、そして永遠に別れていくのだ。
かわす言葉もなく、結ぶ約束もなく。



テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

カンガルー日和

Category : 本・雑誌 小説 .ま行 村上 春樹
カンガルー日和 (講談社文庫)

私を仕事へと引き戻す帰りの新幹線でちょうどこの本を読んでいた。
何でこの本を読んでいるのかわからないけど、その時は、なんか読まなければいけない気がしたんだ。
それは、欲望というより使命感みたいなものだった。
日常はそういった無駄な使命感の連続で作られている。

読んでいくと、カンガルーが出てきて、吸血鬼が出てきて、あしかが出てきて。。。

少し混乱してきたので、冷静になるため新幹線で100パーセントの女の子に出会うことはあるのか考えてみた。
そしたら、どういう因果なのか知らないけどプロ野球選手が乗ってきた。
私は野球が大好きだし、子供の頃の夢は野球選手になることだったからとても嬉しかったけど、
何も今じゃなくてもいいじゃないかと思う。
100パーセントの女の子と正反対ではないかもしれないが、程遠い存在であることは間違いない。
こうして、私は新幹線で100パーセントの野球選手に出会ってしまった。
いや、応援してる球団の選手じゃなかったから実際は90パーセントぐらいか。
でも、昔は応援してる球団にもいた選手だからやっぱり95パーセントぐらいにしておこうか。

こうして、十分に冷静になったことを確認してもう一度読み始める。

スパゲティーが出てきて、かいつぶりが出てきて、羊男が出てきて。。。

どうやら、また混乱していたようだ。
読み終わった本を閉じてみても、まだ浮遊感が残っている。
ふと、本のタイトルを見る。
ああ、そうか。
今日は年に何回あるかわからない絶好のカンガルー日和だった。

ようやくいつもと変わらない私と、変わりようがない世界に戻ってきたようだ。

0612


18つの短いお話が綴られた短編集です。
最後の図書館奇譚を除けば、ほんの20ページ程度で終わるのでほんとに一つ一つの話が短いです。
話の内容というよりは、スタイリッシュな文章が生み出すシュールな空気感を味わう本でしょうか。
佐々木マキさんの絵もその空気感を出すのに一役買ってます。
とりあえず、不思議なお話が盛りだくさん。
そんな不思議なお話が温かく優しく包み込んでくれます。
氏の作品ですっかりお馴染みの羊男なども出てきます。
何気ない日常の瞬間を思いっきりファンタジーな世界にするとこんな感じになるのでしょうか。
いや~それでもこんな不思議なことにはならないかな。
ただ、なんとなく納得してしまう感じもあったりでやっぱり不思議です。(笑)
ほんとに軽く読める短編集です。
まだ読んだことない人でも取っ付き易い本だと思います。
そして、氏の長篇が駄目だった人でも案外短編だと良かったりするかもしれません。

私的評価 ★★★★☆




もちろん今では、その時彼女に向かってどんな風に話しかけるべきであったのか、僕にはちゃんとわかってる。
しかし、何にしてもあまりに長い仮白だから、きっと上手くはしゃべれなかったに違いない。
このように、僕が思いつくことはいつも実用的ではないのだ。
とにかく、その仮白は「昔々」で始まり、「悲しい話だと思いませんか」で終わる。


            4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて より




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たそがれピエロ

Author:たそがれピエロ
現在社会人1年目。
仕事に追われブログの更新もやや停滞気味。
そんな私の日常や趣味をだらだらと書いています。
最近は映画の記事が多め。

当ブログはリンクフリーですのでお気軽にどうぞ。

好きなアーティスト
・椎名林檎
・東京事変
・中島美嘉
・宇多田ヒカル
・富田ラボ
・Mariah Carey
・Sade
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・東野圭吾
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