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チェーン・ポイズン

Category : 本・雑誌 小説 .は行 本多 孝好
チェーン・ポイズン (100周年書き下ろし)

「本当に死ぬ気なら一年待ちませんか?」

自殺志願者に向けられた命の取り引き。それは希望なのか絶望なのか・・・

たぶん"死"ってものは思っている以上に自分の身近にある。当たり前のように。
人が孤独を感じた瞬間、その存在が強くなるのだろう。

じゃあ孤独とは?一人分の孤独の重さとは?
私はまだそんなに意識したことがないですが、きっといつか感じるときが来るでしょう。

そのとき、私はそれを伝えられる人でいたい。例え、共有できない孤独を持っていたとしても。

自分が孤独だと伝えられる誰か、あなたにはいますか?

+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

思ってた以上に面白かったです。死に対する甘美な魅力を書きつつも、それ以上に生に対する希望を感じさせてくれるのはお見事。
特に最後の展開には正直驚きました。まさかそんな仕掛けがあったとは。。。読み返す必要もなく"ああ、上手いなぁ"っと思いました。
ただ、その仕掛けで物語がより良くなったわけではないので、あってもなくとも良かったかなという印象。

私的評価 ★★★★☆



「人はみな孤独です。誰だって一人分の孤独を抱えている。そんなのに重いも軽いもない。
 等しく一人分の孤独を、みんな抱えているんですよ。一人分の孤独になら耐えられる。
 そういう耐性を人間は備ええているはずです。」


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テーマ : 最近読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

1973年のピンボール

Category : 本・雑誌 小説 .ま行 村上 春樹
1973年のピンボール (講談社文庫)

1973年9月、この小説はそこから始まる。

僕はピンボールの呪術の世界に入り込んでいた。
3フリッパーの「スペースシップ」。彼女は素晴らしかった。

そして、年が明けた2月。彼女は僕のもとを去っていった。
しかるべき時がきただけだ。

ある晴れた日曜の朝。
目を覚ました時、両脇に双子の女の子がいた。
これもまた、しかるべき時がきただけの話だろう。

配電盤が死にかけているのも、あるいはそうなのかもしれない。

直子が僕の前から消えたこと・・・
これも、おそらくはしょうがないことだったんだろう。

何事にも始まりと終わりがある。
大抵のものに入口と出口があるように。
それは必然であり、誰にもそれを変えることはできない。
そうして、あらゆるものは過ぎ去っていく。

テネシー・ウィリアムズがこう書いている。過去と現在についてはこのとおり。
未来については「おそらく」である、と。
しかし僕たちが歩んできた暗闇を振り返る時、
そこにあるのもやはり不確かな「おそらく」でしかないように思える。
僕たちがはっきりと知覚し得るものは現在という瞬間に過ぎぬわけだが、
それとても僕たちの体をただすり抜けていくだけのことだ。

何かが過ぎ去るのはやはり寂しい。どちら側にいたとしても。
だから、振り返るのはよそう。
長々と話すのもやめよう。

その代わり、たった一言この言葉だけ交わして欲しいんだ。
"またどこかで会おう"と。

+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

初期の青春3部作のうちの第2作です。(ダンス・ダンス・ダンスまで括ると4部作)
本作はデビュー作の「風の歌を聴け」やこの後の「羊をめぐる冒険」に比べるとやや影が薄いです。
でも、決して読み飛ばすことはできない作品です。
第3作の「羊をめぐる冒険」はもちろんのこと、後の作品に繋がってくる部分が各所に見られます。
「ノルウェイの森」の直子、そして「ねじまき鳥クロニクル」の井戸のメタファー等々。
今回も前作の「風の歌を聴け」と同様に"僕"と"鼠"と"ジェイ"が出てきます。
ただ今回は"僕"と"鼠"の2人の接点はなく、並行線のまま話は進んでいきます。
前作に比べると、雰囲気はどことなく前向きで爽やかさが残ります。
これもまたボリュームが全然ないので、あっさり読めてお勧めです。

私的評価 ★★★★☆



「それでも人は変わりつづける。変わることにどんな意味があるのか俺にはずっとわからなかった」
 鼠は唇を噛み、テーブルを眺めながら考え込んだ。
「そしてこう思った。どんな進歩もどんな変化も結局は崩壊の過程にすぎないじゃないかってね。
 違うかい?」
「違わないだろう」
「だから俺はそんな風に嬉々として無に向かおうとする連中にひとかけらの愛情も好意も持てなかっ
 た。・・・この街にもね」
 ジェイは黙っていた。鼠も黙った。彼はテーブルの上のマッチを取り、ゆっくりと軸に火を燃え移らせ
 てから煙草に火を点けた。
「問題は」とジェイが言った。
「あんた自身が変わろうとしていることだ。そうだね?」




テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

スプートニクの恋人

Category : 本・雑誌 小説 .ま行 村上 春樹
スプートニクの恋人 (講談社文庫)

"あちら側の世界"と"こちら側の世界"について考えたことがあるだろうか。

ある日突然"こちら側"にいたぼくが"あちら側"にいる。
ある日突然"こちら側"にいた彼女が"あちら側"にいる。

あちら側は自分でもわからないぐらい遠い世界かもしれない。
或いは、夢の中でしか辿り着けない世界かもしれない。

そして、これは、誰にでも容易に起こりえる。特に恋愛に関しては。
物語の中の"ぼく"と"すみれ"と"ミュウ"がそうだったように。

この物語では一貫して"喪失感"が描かれている。
"こちら側"に残された者。"あちら側"に行ってしまった者。
それぞれの思いがどうしようもなく哀しく、寂しくすれ違って。。。
なぜ、そこまで孤独にならなくてはいけないのか。
なぜ、大切なものをわざわざ失わなければいけないのか。

そもそも、人を好きになるとは?愛とは?
その答えは?
・・・わからない。
だけど、その答えには少なからず"喪失"が含まれているはずだ。
だから、なにか大切なものが欠けたり、失う必要があるんだ。
それは、人が撃たれたら、血が流れるぐらい自然なことで現実の根本にあるもの。

結局のところ、人間の一番奥底にある本質は孤独なのだろうか。
そうだとしたら、ずいぶんと哀しい生き物だ。
これじゃあ、スプートニクと一緒じゃないか。

でも、ぼくらは同じ世界の同じ月を見ている。ぼくらはたしかにひとつの線で現実につながっている。
じゃあ、どうすればいい?
やることは単純だ。
その細い糸を静かにたぐり寄せていけばいいだけ。

2010-1127

この前の「遠い空の向こうに」でスプートニクが出てきて、この作品を思い出しました。
それだけの理由で、かなり久しぶりに読み返してみました。
最初読んだときは、とにかく難しいな~って感じでした。
でも、この人が作る不思議な世界ってなんか魅力的なんですよね。
改めて読んでみるとこれは純粋なラブ・ストーリーであると思いました。
そして、伝えたいことはとてもシンプルなのかなと。
最後の展開はちょっとだけ前向きな方向でしたが、
やはりどこか"喪失感"を感じずにはいられない終わり方でした。

私的評価 ★★★★☆



ぼくは眼を閉じ、耳を澄ませ、地球の引力を唯ひとつの絆として
天空を通過しつづけているスプートニクの末裔たちのことを思った。
彼らは孤独な金属の塊として、さえぎるものもない宇宙の暗黒の中でふとめぐり会い、
すれ違い、そして永遠に別れていくのだ。
かわす言葉もなく、結ぶ約束もなく。



テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

終末のフール

Category : 本・雑誌 小説 .あ行 伊坂 幸太郎
終末のフール (集英社文庫)

八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。
この物語はそう予告されてから5年経った世界の話。

地球が滅亡するまで後3年という所の設定が何とも面白い。
もし、そう予告されたら果たして自分はどう行動するだろう。
今日でも明日でもなく、後3年なのだ。
何かするにはあまりに中途半端だし、何かしないにしてはあまりに長い。
しかし、そんなことを気にする必要が今更あるだろうか。
この物語に出てくる様々な登場人物の生き方を見ているとそう思ってくる。

「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」

私のこの問いに対する答えは"わからない"だ。

明日死ぬなら生き方が変わるかもしれないし、結局普段通りかもしれない。
どれぐらい生きるつもりなのかもわからないし、知りたくもない。

生きるってことは要するにそんなに綺麗に考えられるものじゃない。
必死に楽しんで必死にもがいて苦しんで・・・
ただその先にある何かに向かって進んでいくだけだから。


8つの短編集から成る物語です。
どの章に出てくる登場人物もどこにでもいそうな人ばかりです。
最初の設定が現実離れしているだけに登場人物が普通の人なのは、良いバランスになってます。
テーマは重そうなのに軽快に書いてしまうあたりが伊坂さんらしいです。
各章のタイトルはちょっと無理やり感があってイマイチですかね。
でも話の内容は結構好きでした。
終末が来た時に何をするのか。まぁ、その時が来ないとわからないですよね。

私的評価 ★★★★☆



「生き残るっていうのはさ、あんな風に理路整然とさ、『選ぶ』とか、『選ばれる条件』とか、
そういうんじゃなくて、もっと必死なもののような気がするんだ」
「必死なもの?」
「じたばたして、足掻いて、もがいて。生き残るのってそういうのだよ、きっとさ」




テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

Story Seller〈2〉

Category : 本・雑誌 小説 その他
Story Seller〈2〉 (新潮文庫)


「story seller」シリーズ第二弾。

沢木耕太郎
伊坂幸太郎
近藤史恵
有川浩
米澤穂信
佐藤友哉
本多孝好

今回は以上の7人の短篇集。
前回から道尾秀介氏と沢木耕太郎氏が変わっております。

それでは早速感想。

一冊としてのまとまりは第一弾のほうが良かった感じです。
ただ、個人的には一つ一つの話は第二弾のほうが良かったですかね。

1では伊坂さんの作品はちょっといまいちかなと思いましたが、
今回は断トツで伊坂さんの合コンの話が面白かったです。
やはり伊坂さんは私たちが考えてない先のことまでしっかり考えてあるんですねえ。
見事にその緻密な構成にやられました。
次点で良かったのは、沢木耕太郎氏の「マリーとメアリー」。
酒の話、名前に関する話は面白いですね。
しっかりと「story seller」の世界に引き込んでくれました。
村上春樹氏が出てきたのにはちょっとニヤリ。
そして締めくくりの本多孝好氏の「日曜日のヤドカリ」も無難にまとめてあり良かったです。
シリーズ物はだいたい最初が一番面白いのでこれはどうかなと思っていましたが、今回もなかなか楽しめました。

これでようやく、第二弾も読み終わったので次はいよいよ第三弾ですね~。
まぁぼちぼちと読んでいきたいと思います。

私的評価 ★★★★☆




男は合コンに参加する。
約二時間のごく普通の合コンだった。
楽しい会話とはっとする出会いがあるものの、人生は変わらない。
もちろん、世界も変わらない。

                                     伊坂幸太郎 「合コンの話」 より



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現在社会人1年目。
仕事に追われブログの更新もやや停滞気味。
そんな私の日常や趣味をだらだらと書いています。
最近は映画の記事が多め。

当ブログはリンクフリーですのでお気軽にどうぞ。

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